2020年秋・冬号

薬局・薬剤師の団体は
国民に役割を啓発すべき

執筆者:藤木 洋 
 今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、これまで見えなかったものが可視化されたことが少なからずあります。その最たるものが、わが国のデジタル対応が世界に比べて遥かに遅れているという事実でした。薬局・薬剤師に関わることでは、世間がどのように薬局・薬剤師を見ているのかが分かりました。10月8日時点では、新型コロナウイルスワクチンの優先接種の対象に薬剤師は含まれていませんし、また、一部の報道によれば、薬局の従業員向けの慰労金を制度化している都道府県は5県に止まっているようです。
 こうした僅かな例を挙げるだけでも、薬局・薬剤師がいかに正当に理解されていないか分かります。かねてから、薬局・薬剤師の活動をもっと啓発すべきとの声はありましたが、今回のワクチンの優先接種の件は、薬剤師の命さえ危険にさらしかねない重大な問題です。薬局・薬剤師の団体は、果たしている役割を国民にもっと啓発する必要があると思います。

 病院薬剤師の活動を取り上げたテレビドラマ「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」は大きな話題を呼びました。実態に添う内容かどうかはともかくとして、普段、目にできない病院薬剤師の活動が、国民に理解されるチャンスになったのですから、それはそれで大いに意味があったように思います。
 新型コロナウイルスのパンデミックでは、これまで見えなかったものが見えました。薬局・薬剤師が果たしている役割が、いかに理解されていないかが表面化しました。今年の2月、横浜港に入港したダイヤモンドプリンセス号では、東京都薬剤師会や神奈川県薬剤師会の会員が医薬品の供給・仕分けを行いましたが、ほとんどニュースには取り上げられませんでした。また、内閣官房・厚労省が9月25日に発表した「新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの接種について(中間とりまとめ)」によると、優先接種の対象は「直接医療を提供する施設の医療従事者等」と記され、薬局薬剤師が含まれるか否かは不明です。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会がいずれ発表することになるのでしょうが、10月8日時点では未確定です。2009年の新型インフルエンザの際は、薬局薬剤師が対象外になったことを記憶されている読者も少なくないと思います。さらに、「PHARMACY NEWSBREAK」9月23日号によれば、薬局従業員向けの慰労金を制度化している都道府県は秋田・熊本など5県に止まっているようです。
 感染リスクがある中で、医薬品の供給を続けているにもかかわらず、このように正当とは思えない対応が取られている背景は、やはり薬局・薬剤師が、業界一丸となったアナウンス活動を行ってこなかった結果と考えざるを得ません。薬局の果たしている役割、薬剤師の職能を十分に告知してこなかったツケが、過去の新型インフルエンザウイルスや今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、薬局薬剤師の命を危険にさらすことになったとしたら看過できないことです。日本薬剤師会や日本保険薬局協会、日本チェーンドラッグストア協会など有力な全国団体が揃っているのですから、国民への啓発活動に共同して取り組んでほしいと心から願っています。
トピックス、処方解析に関連したメディカルナレッジの講座を紹介します。ぜひご覧ください。
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血幹細胞移植や抗がん剤治療による重症肺炎を多数診てきた血液専門医が、新型コロナウイルス感染症の基礎から臨床までを解説します。ウイルスの特徴、新型コロナウイルス感染症の臨床経過、治療薬、重症肺炎の治療までをわかりやすく説明します。
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トピックス3
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健康食品概論1~3
健康食品とは何か、機能性食品の基本知識、健康食品の安全性、についての3講座です。サプリメントと健康食品の違い、その法的位置付け、機能性食品・保健機能食品・特定保健用食品・栄養機能食品・機能性表示食品・特別用途食品といった分類と、その内容について詳細に解説されております。そして、健康食品の品質と安全性について、海外との比較を含め、様々な問題点についても詳しく説明されております。
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